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日本の中世に発達した特異な贈与経済を紐解く 中公新書『贈与の歴史学』

今の経済を論じる人というのは、どうも攻撃的な人間が多く、自己主張ばかりで特にネットではわけの分からない状態だ。
贈与経済なる言葉も、なぜか脱成長という概念に括られてしまったり、極めて狭い定義で語られ、本来の意味からも遠く離れ、争いの種になっているようだ。

なんとも不毛なことではあるが経済自体はおもしろい。
そんな争いを離れてみれば贈与が人類史にもたらした効果については興味深いものがある。
そんな贈与を歴史の視点から、特に日本の中世で特異な発展を遂げた事象について書かれたのが、中公新書の『贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ』である。

贈与の歴史学 儀礼と経済のあいだ (中公新書)

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作者の桜井英治氏は日本中世史の流通経済史を専門としているだけあって、内容は室町時代が中心だ。

中公新書なので基本的に中学生レベルの日本史の知識、というか日本史が好きなのであれば読むのにはさほど困らないだろう。
ただ南北朝から室町時代の初期の概略だけはおさえておいたほうがより楽しめるのではないだろうか。

それよりも経済学や歴史学だけでなく、経理事務の実務の知識がある方がよりおもしろくわかりやすい。
受け取った贈与品を別の相手に贈ったり、贈与自体を相殺したりするところは、商売での手形や売掛金と買掛金の扱いをおもわせるところだ。
贈与の発展につれ、贈答品が現代の美術品のようにオークションにかけられたり、売買をされていたのが、やがてその目録自体が価値を持つようになり、ときにはまるで約束手形のように目録が取引に使われるのである。

いわゆるイメージする贈与経済よりもより高度なシステムが展開されているのである。

この後、戦国から安土桃山にかけての茶器を始めとする美術品ブームへともつながっていくのだ。

 

ネットでは社交辞令的な付き合いに、異様に拒否感と敵意を表す人が少なからず存在する。
たしかにありのままの自分で他者とよいお付き合いができるのならそれに越したことはないが、実際にはそうはいかないことが多いだろう。
精神が同調しているような双子でさえ、次第にそれぞれの個性が出て来るわけで、ましてや他人である以上、対称を意識したお付き合いは不可欠だ。
お歳暮お中元をはじめ、慶弔ギフト、さらにはお年玉といったものから、なにかと話題の政治家とカネ、Togetterで物議を醸す隣のサークルとの薄い本の交換やバイトのシフト交換などなど。
こうした有形無形の贈り合いについて、この本は歴史的な側面からも考える良書ではないだろうか。