oregano note

シンプルで合理的な生活

フリーで安心して商用利用が可能なWindowsの明朝体フォントを考える

ペーパーレス時代の到来が叫ばれて久しいが、未だ文章の紙への印刷需要は続いている。 そんな日本語の印刷物では、本文ではやはり明朝体がもっとも読みやすい。 ディスプレイ上での可読性ならゴシック体も悪くはないのだが、やはり紙の上で長文を読むには明朝体だ。

曖昧なWindowsバンドルの游明朝体

現行のWindowsには、游明朝体というフォントがバンドルされている。 書体製作で有名な字游工房が制作した游書体ファミリーのひとつで、游ゴシックとともにWindows8.1から採用されている。

Windowsだけでなく Mac でも OS X でも採用されている。

Macには以前からヒラギノがバンドルされており、ようやくWindowsにも高品質な日本語フォントが採用されることになったのだが、このフォントは商用利用について曖昧となっている。

MacOSではバンドルされたフォントの商用利用について制限はない。 しかしWindowsでは、標準のMS明朝とゴシックが長い間、商用利用不可となっていたことで、利用者には付属フォントの商用利用に関して気になる人も多い。

にもかかわらず、Windows付属の游明朝体と游ゴシックについて、マイクロソフトは未だに商用利用の可否を曖昧にしたまま明らかにしていない。

もちろん大元である字游工房のフォントの利用許諾や、過去にMS明朝やゴシックで訴訟になったこともないことから推測すると、問題となることはまずないと考えるのが妥当だろう。

だが金銭が媒介することになると、少しでもトラブルの種になることは避けたいと思うのも人情である。 商用利用の可否についてはっきりとしていることが望ましいのだ。

デジタルコンテンツのライセンスのややこしさ

フォントに限らずデジタルコンテンツのライセンスは厄介で、よく注意していないととんでもないことになりかねない。

たとえばPCを購入したとして、それをプライベートで使用しようがビジネスで使用しようが、それは購入者の自由だ。 だがデジタルコンテンツはそれを禁じているものが多く、あくまでもプライベートな利用しか認めておらず、仕事では別途契約と料金が必要という条件のものがある。

フォントもまたこの手の問題を抱えていた。 どこまでが利用可能なのかわかりにくかったり、きわめて使いにくいライセンスもめずらしくなかった。 ただ、当時はまだメーカーやベンダーが保険的な意味合いで使用条件を決めていたこともあり、近頃は明快なライセンスが一般的である。

そういう意味でもマイクロソフトにははっきりしてもらいたいのだが、そのつもりは今のところなさそうだ。

ビジネスで使用するフォントなら基本は有料書体

アルファベットと比べ、日本語のフォントは文字数が多く、気軽に制作できるものではない。 それでもフリーの明朝体はいくつか存在し、商用利用が可能なものが大半だ。 そんなフォントのうち、出自がはっきりしているもののなかから、大手が作成したもの、あるいは長期に渡り公開されているものを紹介したい。

だが、その前に….

もしあなたがデザイン事務所やじゅうぶんに利益が出ている法人、個人事業所ならば、基本的には有料の書体を使用するべきだろう。 今回、リストアップしたフォントは、問題のなさそうなものを厳選しているが、フリーのフォントは商用利用可となっていても、トラブル時の補償はなにもないのが一般的だ。

これまでもフリーの日本語フォントで他のフォントの意匠を流用していた問題は一度ならず起きており、商用可能とはいえ可能ならばベンダーが販売している有償のフォントを使用するほうがベターだろう。

モリサワのパスポートや、フォントワークスのLETSなど、年間契約で多数のフォントが使用できるシステムもあるので、検討してはいかがだろうか?

[caption id=“attachment_299” align=“alignnone” width=“223”]MORISAWA PASSPORTモリサワの年間パスポート[/caption]

Google/Adobeの源ノ明朝

まず最初に紹介する源ノ明朝はGoogleがPhotoshopで有名なAdobeと共同で制作したフォントである。 ややこしいのだが、Source Han Serifの日本語部分であり、GoogleではNoto Serif CJKと呼ばれている。 源ノ明朝と対になる存在として、源ノ角ゴシック(Source Han Sans、Noto Sans CJK)が先に公開されている。

フリーのフォントでありながら、5種類のウェイトが用意されており、東アジアの書体のプロジェクトとして作成されているため、日本語以外にも、ハングル、簡体字、繁体字に対応している。

そもそもこのフォントは、さらに英語、ギリシア語、キリル文字なども含め、複数言語の混在の際に違和感のないことがコンセプトにあるため、国際化のこの時代にも向いている。

フリーフォントのライセンスである SIL Open Font License 1.1 で公開されていることもポイントだ。 https://ja.osdn.net/projects/opensource/wiki/SIL_Open_Font_License_1.1

アドビのTypekitからの利用も可能だが、Google Noto FontsやGithubで公開されているので、それをダウンロードして利用したほうが早いだろう。

特にこだわりがないのならば、この源ノ明朝フォントを選択しておけばいいだろう。 使用権限の範囲や製作者が明瞭であり、品質、ウェイトの種類とも申し分なく、他の有料のフォントに勝るフリーの明朝体だ。

源ノ明朝 https://source.typekit.com/source-han-serif/jp/ https://www.google.com/get/noto/

独立行政法人のIPA明朝

続いてはIPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が頒布しているIPA明朝だ。

IPA明朝は、IPAゴシックとともに配布されており、これまで多くの派生フォントが作成されるとともに、様々なシステムで使用されている。 Linuxの日本語ディストリビュートでもこのIPA系統のフォントが採用されることが多い。

製作はタイプバンクで、同社のTB明朝がベースとなり、IPAという独立行政法人により配布されていることで、上記の源ノ明朝と同じく出自が明確であり、リスクがきわめて少ないフォントである。

実績もじゅうぶんであり、オープンソースライセンスで配布されているため権利関係もわかりやすい。

一方で、ウェイトが1種類しかない。 もっともこれはフリーでありながら5種類のウェイトを持つ源ノ明朝の方が特別と言っていいだろう。

昔のMS明朝やMSゴシックのように、和文文字を固定幅、 欧文文字を可変幅としたIPAexフォントもあるが、縦書きへの対応が一部不安定のようだ。 さらに、人名表記のために約6万字の人名漢字を収録したIPAmj明朝も公開されているが、現時点で Microsoft Office や一太郎など、一部のアプリケーションにしか対応していない。

IPA明朝 http://ipafont.ipa.go.jp/

IPAの派生、その他の明朝体フォント

フリーの明朝体で多いのが、上記のIPAフォントを元に作成された派生フォントだ。

日本語のフォントはひらがなを変えるだけで雰囲気が大きく変わる。 市販の書体ではひらがなだけのものも少なくない。

そこでひらがなを作成し、漢字はIPAのものを使用して組み合わせている派生フォントがいくつも作られている。

またIPAをベースに小さな改良を行っているフォントもある。

こころ明朝体 はんなり明朝 http://typingart.net/

ほのか明朝 http://font.gloomy.jp/

ただ、これらの派生フォントはIPAフォントと比較して第3者の手が入っているため、オリジナルかどうかのリスクが高くなる。 商用利用可となっていても、使用には注意することが重要だ。

この他にも、商用化としてフリーで公開されているフォントの中では、比較的、しっかりしているとおもわれる。

xano明朝 http://www.asahi-net.or.jp/~sd5a-ucd/freefonts/XANO-mincho/

花園明朝 http://fonts.jp/hanazono/

はれのそら明朝 http://fontopo.com/

さわらび明朝 http://sawarabi-fonts.osdn.jp/

現在フリーの明朝体は源ノ明朝一択か

こうしてみると、フリーの明朝体フォントでは源ノ明朝が突出している。 その出自上、クオリティ、ウェイト数、多言語での統一感などは、下手な市販のフォントすらも凌ぐレベルである。

書体である以上、デザインの好き嫌いも重要ではあるが、それを除けば商用利用の可否をおいておいても、対になる源ノ角ゴシックとともに揃えておいて損はないだろう。