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シンプルで合理的な生活

三国志を題材にした切り口の少し変わった小説・マンガ

先日、比較的人気のある時代の歴史小説やマンガでは、なにか独自性が必要ではないかと書いたのだが、さまざまな書かれ方をしているのは三国志の時代がその代表だろう。

吉川英治の小説や横山光輝のマンガのように、三国志演義そのものを構築した物語は昔から書かれており、ゲームなどもあり時代の空気感やキャラクターのイメージはなんとなく定まってしまっている。
そんなこともありもう重年以上前から王道的な単純な英雄譚以外の作品が増えている。

日本人はどう三国志を物語ってきたか....というと、大上段すぎるので、ここから、少し変わった視点から書かれた小説やマンガを思いつくままに。

 

秘本三国志 陳舜臣

故陳舜臣が1974年から連載を始めた、当時としては新しい切り口の三国志。
従来の物語では、あくまでも勢力のひとつとして書かれていた道教系集団の五斗米道の人物の視点を元に書かれている。
三国志の時代にも宗教は大きな影響を与えている。
黄巾の乱は太平道というこれも道教系の信者が起こしたものだし、曹操の勢力で中核的存在を担った青州兵もこの残党だ。
また小説中には、仏教系の浮屠の要素も出ており、洛陽に建てられた白馬寺や徐州に寺院を建立した笮融も登場する。

少々古くはあるのだが、意外と似たような切り口の作品が少ないのは、オリジナリティの強さだろうか。

秘本三国志(一) (文春文庫)

 

女媧~JOKER~ 大西巷一

ゆるゆり的?フス戦争を描く大西巷一が月刊アフタヌーンで連載をしていた作品。
のちに曹操孟徳正伝を連載しているが、変わり種では諸葛亮を主人公としていながら、歴史小説よりも中華ダークファンタジーに寄っているこちらの作品の方だろう。
元々、日本で中華モノと呼ばれるジャンルにはごく自然に神仙思想が現実のものとして登場していることが多い。
武侠小説の世界と共通しつつまた少し異なるマジックリアリズム的な世界観だ。

リンクはAmazonだが、マンガ図書館Zにて無料公開もされている。
大西さんの他の作品を読んでいる方ならご存知だろうが、エログロな風味も強いので、その辺が苦手な方は少し注意が必要かもしれない。

女・ ~JOKER~ 1

諸葛孔明 時の地平線 諏訪緑

基本的には人物に焦点を当てている英雄譚で、諸葛亮と曹操の思想的対立などトータルとしてはそれほど目新しくはないのだが、農業共同体を対立軸のテーマのひとつに持ってきている。
なかでも魏の屯田都尉である棗祗がキャラクターとして立っているところはめずらしいのではないか。
ただ、棗祗の人物像や行為自体は、史書にあるイメージとはかなりかけ離れているのは残念だ。
また、一昔前の少女漫画的な手法の上、デビュー当時から中国古代史に題材をとった作品を描き続けてきたこともあり、古い作品からリンクしている要素もあるため、人を選ぶところもある。

諸葛孔明 時の地平線 1〔文庫〕 (小学館文庫 すA 6)


三国志 宮城谷昌光

著名な作家では北方謙三の作品と比べて賛否両論というか、感想では否のほうが多いような気がする宮城谷昌光の三国志。
日本の三国志ファンの知識レベルが古い感覚で捉えたままなのではないかという批判は同感だし、宮城谷さんの作風は奇貨居くべしあたりから変化しているように感じる。
それでも話題になった梁冀の時代から物語を始めるところは、らしいところだ。
ひとつの時代を知るときには、その前の時代から語るのは常道で、たとえば隋唐なら南北朝時代の武川鎮軍閥を知ると理解しやすいようなもので、宮城谷三国志にとってはそれが梁冀だったのだろう。

合本 三国志【文春e-Books】


泣き虫弱虫諸葛孔明 酒見賢一

演義の諸葛亮を主人公に講談の形式で書かれた作品。
元々、三国志の物語は講釈師によって語られてきた過程があるため、講談調での進め方は王道というか先祖返りか。
かなり砕けたつくりというか、完全にギャグであり、なかでも諸葛均の扱いが酷い....
墨攻や陋巷に在りなどとはテイストがかなり異なるが、こういったコミカルな作風も酒見さんの特徴のひとつだ。

ちなみに昨年の秋に、王者の遊戯という郭嘉を主人公にしたマンガを描いていた緒里たばさにより、コミカライズが始まっている。

泣き虫弱虫諸葛孔明 第壱部 (文春文庫)

記憶の本棚やKindleアプリのライブラリから目についたものだけでもこれだけあがる。
三国志モノを熱心に読んでいたのは、もうかなり前なので、ダンボールを漁ればまだまだ出てきそうだ。