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MVNO事業はそこまで苦境なのか?

フリーテルブランドを展開するプラスワン・マーケティングの楽天モバイルへの身売りのためか、MVNOの今後について悲観的な記事をたびたび見かけるようになった。

news.mynavi.jp

上記の記事では、フリーテルの他に、同等の会員数を集めているビッグローブが参入以来一度も黒字化していないということを取り上げており、採算の分岐点にも予想し触れている。

たしかにMVNO事業は濡れ手に粟からは程遠いのは間違いない。
だが、上記の記事は事業の継続性についていささか大げさに書きすぎなのではないだろうか。
MVNOの採算分岐が会員数100万というビッグローブの証言は、多くのMVNOには当てはまらない数字である。
またプラスワン・マーケティングの身売りも同社の特殊な性質によるところが大きく、参考にするには不適格だ。

ビッグローブはなぜ採算分岐が三桁か

一口にMVNOとはいっても、ドコモやauから直接回線を借りている一次業者と、こうした一次業者の元でサービスを行っている二次業者とに大別される。
一次業者はOCNモバイルONEやIIJmioといった一部の会社だ。
当然、ある程度の規模でサービスを展開できるだけの資金力、そして運営するための高い技術力も必要になる。

こうした一次業者には、MVNEとして別の会社に対し、回線の貸与やシステムの保守などのMVNO事業を支援する業者も多い。
MVNEから回線を借りてMVNO事業を行っているのが二次業者であり、日本のMVNO事業者の大半がこの二次業者にあたる。

ビッグローブは一次業者であり、自らドコモと契約している。
そのため多くの二次業者とくらべても、コストも格段にかかるのは仕方がない。
またMVNEとしては大きな展開を見せていないことも重要だ。

さらにこれらの業者はMVNOが事業の柱である会社ではなく、法人向けサービスが主力であり、通信インフラのサービスを行っている。
そのため技術的にも余力を持ってMVNOを運営することが可能だ。
だがビッグローブは元々NECのグループでBtoCを中心とした会社である。

NECから売却された現在はKDDIの完全子会社となっているが、回線はドコモから借りており、au系のMVNOではない。
こういった難しい立場なのもビッグローブの経営を難しくしているのかもしれない。
(ただしビッグローブ全体では大きな利益はないもののNEC時代から堅実な経営を行っている)

いずれにしても、ビッグローブの言う会員数3桁(100万人)が採算の分岐点というのは、事業者の中でも少数派だとおもわれる。

SIM cards

フリーテルの問題

一方、プラスワン・マーケティングのフリーテルだが、こちらは二次業者ではある。
だが、企業規模の割にまるでキャリアのようなあまりにコストが掛かりすぎる経営を行っていた。

なんといっても自前で端末まで用意するという特異な会社だ。
2014年の終盤から自社ブランドのスマートフォンを販売しており、昨年まで定期的に新機種を投入していた。

ほんの数年前のことだが、当時はSIMフリースマホという言葉自体も馴染みではない時代である。
国内メーカーのAndroidスマートフォンの出来があまりにひどかったし、海外メーカーは日本の通信事情にあわないような端末な上に、性能の低いスマートフォンがほとんどだった。

しかしASUSを皮切りに、Huawei、ZTE、Motorolaといったメーカーが、日本市場に本格的に参入を開始したことで、日本のSIMフリー市場も大きな変化を見せはじめる。
フォーマプラスエリアやプラチナバンドに当然のように対応させるだけでなく、しかも中国メーカーの技術力が格段にあがってきた時期である。

一方、フリーテルは国産スマホといううたい文句で販売をしていたが、実態は中国の工場へ依頼したOEM品だった。
当然、同じ中華スマホでもHuaweiやZTEとは勝負にならない技術力しかない。
昨年2016年になると、発売遅れやカラー展開すら予定通りいかなくなる始末となり、製品の不具合も頻発するなど、クオリティにかなり問題をかかえるようになった。

FREETEL MIYABI

肝心のMVNO事業も決して評判が良いものではなかった。

ITmedia等で、各MVNOのスピードテストの記事が掲載されるのだが、そこではかなりよい数値が出るのに、実際に使用すると体感ではとてもそんな速度は出ない業者がある。
いわゆるスピードテストブースト(とはいっても、具体的にどうしているのかは諸説あり不明)と呼ばれる現象である。
そこで頻繁にあげられていたMVNOのひとつがフリーテルだった。

そして、おそらく2016年の段階ではすでに資金繰りが苦しくなっていたのだろう。
スマートフォンを頻繁に買い替えさせるようなプランを登場させたり、後に消費者庁から指摘されるような広告を打つようになる。
先に書いた自社製の端末もトラブルが非常に増えていった。

一方で、芸能人を多数起用した新製品発表会や、実店舗展開、海外進出といった景気の良いワードを並べ、実態を大きく見せようとしていた。
先にあげたビッグローブは、MVNOは赤字とはいえ事業全体では黒字であるし、バックボーンは大手通信業者である。
だが、小さな会社がキャリアと同等のことをしようとすれば、当然、資金繰りが危うくなるは想像に難くない。
会社の規模とMVNOがまだ小さなパイと考えると、フリーテルの展開はあまりに無謀なやり方だった。

MVNOを隠れ蓑にした怪しい業者も

MVNOで気がかりなのは、事業の収益よりもむしろ別の方面だろう。
あまたあるMVNOにはかなり怪しいところも少なくない。
実態はMVNO事業を利用し、代理店を募集する形でのネットワークビジネスを繰り広げているところもある。

それなりに名前の知れたMVNOですら、キャリアと変わらない複雑な契約条件や、わかりにくい解約手続きのところも出てきている。
さらにキャリアがサブブランドを設けて宣伝費をかけて食い込んでいることも含めて、いずれまた問題になるのではないだろうか。