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シンプルで合理的な生活

クロネコヤマトが賃金アップよりも再配達を減らす方針を採る理由

私の会社はもう20年ほどクロネコヤマトと契約している。
入れ替わりもあるが、顔なじみのドライバーの方も何人かできるわけで、時折、世間話などをするのだが、近頃の話題といえばやはり宅配業界のことだ。
あまりナイーブな部分には触れにくいとはいえ、実際に配送を担っているドライバーの方の話はなかなか興味深い。

※ただ、これはあくまでも私がお世話になっているクロネコヤマトのドライバーから聞いた話が元であり、地域が異なればまた違った状況である可能性はあります。

クロネコ (Kuroneko: Black Cat)

給料よりも労働時間に問題がある

個人向け宅配業界において人手不足は深刻な問題となり、限界を超えた営業所も出始めている。
ヤマト運輸では、値上げで荷物の総量を減らすとともに、再配達への対策や、街中の施設への宅配便ロッカーの設置といった対策を打ち出しているが、これに対しては、

  • 賃金を上げろ
  • 給料をアップすれば人手が増えて楽になる

といった指摘をネットでよく目にする。
だが、実際にドライバーの方から聞く話では、そうではないようだ。

クロネコヤマトの現状としては、

  • 給料自体はそれほど悪くはない
  • 新しい人も定期的に応募してくる
  • 激務で辞めていく人が多い

ということだそうだ。

クロネコの配達員が辞めていくのは、給料の問題よりも労働時間にあると考えていいだろう。
むしろヘタな職に就くよりも宅配業界のセールスドライバーのほうがいいと言う。
そのため仮に給料が増えたとしても、現状ではせっかく採用した従業員の多くがすぐに辞めてしまうため、今の労働条件ではどれだけ給料をアップしても根付く人が少なく解決にならない。
労働組合が労働時間の短縮を最大の目的に掲げているのもここに原因があるようだ。

もちろんさらに給料がアップするに越したことはないが、やはり労働時間の短縮が現場の人手不足解消の最大の要因だろう。
時間が短縮されることで、肉体的精神的な負担が減ることに加え、必然的に時間あたりの賃金もアップすることになる。

労働時間を減らすためには

労働時間の短縮を考える上で、やはり再配達のしめる割合は大きいだろう。
今年の春の段階で2割程度が再配達になるという。
荷物の総量が格段に増えているため、2割はかなり大きな数字である。

また現在では共働きで日中が留守になるところも多く、夕方から夜間の配達が増えるのも大変だ。
ヤマト運輸では夜間配達専門の従業員を募集するとのことだが、再配達分と合わせてかなりの量になる上に、時間的に交通量の増加や、暗い中での配達が増えるため、労働効率は悪いだろう。

ドライバーも慣れてくると荷物の量や配達指定時間にあわせてルートを決めて走ることができるが、この点は困りものだという。
最近では宅配ボックスの販売も増えており、駅や街の共用の宅配ボックスの設置のニュースも多い。
こうした宅配ボックスの設置があれば、ドライバーも在宅を気にせずに配達が可能になるため、労働時間の短縮につながる。

本当のところ、他の運送会社はもっと大変ではないかという。
荷物自体は少ないとはいえ、担当地域がクロネコヤマトよりかなり広い。
ヤマトならひとつの市内にふたつ以上の営業所があることも珍しくはないが、他の運送会社はたいていひとつの営業所で複数の市町村を担当していることがほとんどだ。
そのため移動距離が大きく、再配達があるとかなり大変だろう。

WHAT?! Kuroneko Yamato sighting in downtown San Francisco!

値上げのための世論形成

現在、アマゾンとの契約の見直しで料金を大幅にアップするのが規定の方針だ。
一度下がった価格は再び上げるのはなかなか難しい。
デフレだデフレだと騒いでいる人も、いざ、自らの収支に直結する価格の上昇には、途端に反対するというのが人情だ。

ヤマト運輸は世論形成に長けているところもある。
一昔前なら送料が安いことが正義とばかりにアマゾンとの契約の見直しも賛同する人が少なかったのではないか。
それを自らへのバッシングを利用しつつ、運賃の値上げやむ無しの方向へと世論を持っていったのではないか。

我が社に荷物を取りに来るドライバーの方も、
「うちの偉い人たちはなかなかしたたかだから」
と苦笑いしていたのが印象的だった。