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シンプルで合理的な生活

デゾルドルからみる馴染みのある歴史上の舞台や人物を取り上げる難しさ

ツイッター上で、単行本の売上が芳しく無く、このままでは打ち切りにと訴えて話題となった、岡児志太郎の『デゾルドル』

デゾルドル(1) (モーニングコミックス)

だが、結局、2巻を持って連載終了となることが作者のツイッターで発表された。
ネット上では宣伝手法について厳しい声が多い半面、「購入する」という声も少なくなかったのだが、実際の売上には結びつかなかったようだ。

私自身も、試し読みを見た限り、悪くはないものの、そこから読み進めようという魅力までは感じなかった


百年戦争やジャンヌ・ダルクとその関係者たちを書いたフィクションは、戯曲から映画まで世界中にあふれている。
日本でも、小説なら佐藤賢一や藤本ひとみらがまさにこの時代を舞台に書いているし、漫画でも見えない道場本舗さんが主要な一覧をあげている。

http://d.hatena.ne.jp/gryphon/20180418/p3

それ以外にも古い上に未完だが、酒見賢一原作に近藤勝也作画の『D’arcダーク ジャンヌ・ダルク伝』という作品を思い出してしまう。

D’arc~ジャンヌ・ダルク伝 1 (アニメージュコミックスワイド判)

さらに最近ではFateシリーズでも有名になったので、キャラクターに馴染みのある人も少なくなさそうだ。

そのため、画力もさることながら、先行する作品のストーリーやキャラクターと比べて、突出したなにかや、新しい要素を提示することができないと、読み進めてもらうにはどうしても厳しくなってしまう。

また日本の室町から安土桃山の戦国モノや、中国の後漢末の三国志モノは膨大な数のコンテンツが生まれているが、それ以上に需要が高く、どんな作品でも消費したい読者があふれている。
そのため、戦国と三国志の作品はある程度までは読み進めてくれる特異な舞台だ。

だが、百年戦争の時代は知られているとはいえ、そこまで人気の高い時代でもない。
最初の数話、特に1話である程度は読者のココロをつかまなければ苦しくなるだろう。

 
比較というか、この手の話では、どうしても『キングダム』を考えてしまう。
今でこそ歴史マンガでも十指に入る人気作品だが、連載開始当初は決して評判が良かったとは言えない。
三国志モノ以外の中国史マンガはあまり多くないため、かなり気になって(というよりそれ以前の李牧などの読み切りあたりから普段は買わない掲載誌を買っていた)読んでいたのだが、打ち切りになるのではないかとドキドキしていた記憶がある。

連載当初は地味というか、これまでの読み切り作品のような野暮ったさもあった。
ダブル主人公的な存在である始皇帝は知名度こそあれ人気の高い時代でも人物でもないし、むしろ秦は七国の中でもたいてい悪役に回る側だ。
なにより主人公の李信自体、有名なエピソードは噛ませ犬としてのものであり、人物だけで読む人も少ないだろう。

それでも途中から原さんがこの時代の資料を読み込み、それを消化してマンガに落とし込む労力と熱意が実ったのか、編集者の能力もあったのか、次第に人気が出はじめていった。
それに地味だったとはいえ、信のキャラクター性には物語の推進力があり、それを表現する画力もすぐれていたことは大きかったのだろう。

デゾルドルはもっと構成やキャラクターを練ってから連載が開始されていれば、あるいはなにかキャッチーな特徴を早めに打ち出せていたらと思うと、なんだかもったいない終わり方だった。