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シンプルで合理的な生活

軽量で高強度の新素材セルロースナノファイバーの未来

日本の経済がうまくまわっていない理由のひとつとして、市場で競争力のある魅力的な技術や製品が生み出せなくなりつつあること

たとえば現在花形のスマートフォンをみても、日本メーカーでグローバル市場で競争力のあるのはソニーくらいだろうか。
シャープやパナソニックも海外の一部の国で販売はしているが、なかなかシェアを得ることはできていないようだ。

スマートフォンの部品では、同じくソニーのカメラセンサーはほぼ一強と言っていいほどのシェアを誇る。
だが、数年前には中国メーカーを中心に高いシェアを誇っていたジャパンディスプレイは、今やその見る影もない。

では自動車はとみると、トヨタは善戦しているものの、将来的には国策である水素エネルギーを利用した自動車が、果たして国際市場で戦えるのかどうかという不安がつきまとう。
世界的にEVへのシフトが強まっている中で、FCVであることがデメリットになる可能性は高い。

Tesla Roadster

軽くて強いセルロースナノファイバー

とはいえ、面白そうな技術や製品が産まれていることも確かである。

そのひとつがCNF(セルロースナノファイバー)だ。

紙と同じくパルプを原料にしながら、ナノレベルにまで細かくほぐしたバイオマス素材で、きわめて細い繊維が結合することにより、鉄の5倍の強度で、重量は1/5程度という高強度を生み出している。

その強さはアラミド繊維と同等の高強度を誇ると言われている。
アラミド繊維は、自転車に乗る方ならばピンと来るだろうが、ワイヤーの代わりにタイヤのビードの部分に使われるほどの硬い繊維だ。

さらに温度変化にもガラスと同等レベルの伸縮しか起こさない。

それでいて、植物由来の繊維のため、環境負荷も低い上、人体への影響も少ない

定期的に、テレビ番組や新聞にも取り上げられていることから、ご存じの方も多いのではないだろうか。

軽量素材からボールペンのインクまで

このCNFはさまざまな用途が想定されるが、まずは鉄製品の代替品があげられるだろう。
EVのように電池重量がかかる自動車は軽量化が必須になる。
この分野へはハイテン材やアルミニウム合金、炭素繊維といった有望な素材があるが、CNFを合成樹脂と混合した素材も、自動車の部品としての需要を期待される。

他にも、フレキシブルな特徴を活かしたモバイル部品や、電子基板食品の包装紙おむつ化粧品音響製品など、既にきわめて多岐にわたる用途が想定されている。

すでに昨年に商品化されているものとしては、三菱鉛筆から登場しているシグノ307というゲルインクボールペンがある。

ゲルインクボールペン セルロースナノファイバー (0.5mm) ユニボールシグノ307【黒】 UMN

このボールペンは、インクにCNFが配合されており、なめらかな書き心地をつくりだしている。

シグノ307はシグノシリーズを扱っている文具売り場でも置いていない所は多いが、発売以来、ゼブラのサラサドライと並んで支持を受けているボールペンだ。

山林資源の有効利用

日本にとってCNFが有望なのは、原料となる樹木に恵まれているところだろう。
今、日本の山林資源は輸送にもコストがかかるため、伐採されるだけで放置されているところが少なくない。

これらの山林の資源の用途としては、これまでもバイオマス発電などが存在したが、NFCもまた素材として有効に使えるというのは大きなメリットだろう。

すでに多くの企業や大学が参加しているが、特に日本製紙大王製紙のような製紙会社には大きな期待がかけられている。

Forest

原料は山林の樹木だけではなく、植物ならば幅広く素材になる可能性を秘めている。

最大の課題はコスト

ここまでは明るい未来なのだが、現実的に普及となると壁が立ちはだかる

まずCNFは炭素繊維と比べて安いとはいえ、現時点ではコストは非常に高くつく。

たとえば車体用に樹脂との混合素材にしたものは、キロあたり5000円から10000円のコストがかかる。
現在軽量素材として主流のハイテン材が100円から200円であり、2030年頃に向けて500円程度のコストを目指しているとはいえ、まだかなり先の話である。
さらにこの分野ではアルミニウム合金やマグネシウム合金といった軽量な金属素材との競争も待っている。

またCNFを開発しているのは日本だけではなく、数多くの国で研究されている。
そのため、他国よりもより早い実用化と低コスト化を急ぐ必要があるだろう。