oregano note

シンプルで合理的な生活

話題の中公新書より3冊をピックアップ。飲み物から世界史の動きを読む

中公新書が話題になっている。 きっかけは応仁の乱という地味なテーマにかかわらずヒットをしており、その流れから中公新書の編集部の方針が取り上げられていた。

headlines.yahoo.co.jp

こうした古いタイプの新書シリーズが好みである。 中公新書以外では、ちくま新書、岩波新書、装丁が変わる前の講談社現代新書など、比較的良書が揃っている。

一方で10年ほど前からいくつかの出版社が新書を立ち上げたのだが、こちらは散々な状況だ。 あえて名前はあげないが、政治家、芸能人、経営者のエッセイまがいのタイトルで溢れている。 もっとも著者の多くは多忙な生活を送っており、実際はゴーストライターが執筆しているのだろう。 いわば新書サイズのタレント本だ。

だが本来、新書は手軽な知への入門であるべきではないだろうか。 社会人だけでなく、学生も気軽に手に取れる価格、そして内容が重要のはず。

中公新書では、大学1年生が平易に読める文章が基準という。

これはとてもすばらしいことだとおもう。 私もこうした新書には学生時代、たいへんお世話になったし、今でも本棚やKindleにスペースを取っている。

出版不況と言われる昨今だが、それはきちんとした仕事をしないで目先の話題性ばかり追ってしまうせいなのではないだろうか。

飲み物が語る世界史

f:id:OREGANO:20170621070318j:plain

では本題の中公新書から飲み物が動かした世界にをテーマにした新書をピックアップしたい。

我々の世界を語る上で飲み物は欠かせない。

日本ではあまり意識することがないが、海外では日常で良質な飲料水が手に入るとは限らないため、古来よりアルコールをはじめとする飲み物が必要とされていた。 今では嗜好品に分類される飲料も、当時は生活の必需品だったのだ。

さらに単なる水分補給だけではなく、薬効をも期待されて飲まれることが少なくなかった。 21世紀の今でも、コーヒーを1日に何倍飲むと癌になる確率が低くなる、というような研究結果がニュースになることからおわかりいただけるであろう。

そのため、洋の東西で歴史のキーアイテムとなったのである。

と、大きく書いたのだが、実のところ、個人的な趣味で飲み物の歴史に興味があるからで、つまり読んでおもしろかった本を3冊推薦したい

茶(紅茶・緑茶)

茶の世界史 緑茶の文化と紅茶の社会 (中公新書)

発売元:中央公論新社
発売日:2013年11月01日
世界史をもっとも動かした飲み物といえば茶をおいて他にない。 アヘン戦争やアメリカ独立、ときに莫大な富の移動を伴ったかとおもえば、ときに精神性にも深く関わっており、こうした茶の歴史を多角的に著している。 緑茶から紅茶まで、茶の歴史への入門書として最適な1冊だろう。

コーヒー

コーヒーが廻り世界史が廻る 近代市民社会の黒い血液 (中公新書)

発売元:中央公論新社
発売日:2013年11月01日
コーヒーは、21世紀の現在、飲料の王様的ポジションにまで登りつめた。 イスラム世界から始まり、ヨーロッパ諸国でコーヒーが西洋の近代社会に間接的に影響を与えたかを独自の視点で書かれている。 コーヒーの歴史の概説を知りたい場合には不向きだが、現代のコーヒー消費からみる先進国と第三世界の歪みにも触れている。

チョコレート

チョコレートの世界史 近代ヨーロッパが磨き上げた褐色の宝石 (中公新書)

発売元:中央公論新社
発売日:2014年07月11日
チョコレートと言えばタブレットやボンボン・ショコラをイメージするが、19世紀までは飲み物として、いわゆるホットチョコレートが一般的だった。 中南米で飲まれていた頃から始まるチョコレートの社会経済史を綴っている。 また本著の後半、飲み物から固形となってからのことだが、チョコレート産業における労働問題までも取り上げているところが特徴的である。

ワインの歴史の新書は

本来ならワインも歴史上重要な飲み物なのだが、中公新書からはあまりおすすめできる本がない。

前者はワインづくりの本として、たいへん読みごたえがあるのだが、今回のテーマとは趣が異なる。 後者は目録にはあるのだが、電子書籍化されておらず、しかも新刊で手に入れるのは難しいというおまけつきである。

他の書籍を当たったほうが早いかもしれない。

最後に

このなかでもっとも読み物として面白いとおもうのは『コーヒーが廻り世界史が廻る』だろう。 こちらは飲み物だけでなく、新書でお気に入りの良著を選んだら、トップ10のなかに入れる人も少なくないのではないか。

ここにあげた3冊は、すでにそれなりの評価を得ている書籍であり、すでに読んだことがある方も多いのではないだろう。 とはいえ未読の本があれば、ぜひ一度手にとってもらえれば、うれしくおもう。