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先進的なケニアの紅茶産業とダージリンの話

先日、ダージリンが現地の情勢により入荷が危ういという話題を目にして、ダージリンのシーズンを追いかけなくなって久しいことに気がついた。

Gclef: 茶飲み話 吉祥寺本店 | ダージリンの生産がストップしている件について

以前は毎年シーズン、特にファーストとセカンドの季節は必ずどこかの茶園を購入していたし、オータムナルも気が向けば買っていた。
とにかく最初に飲んだファーストフラッシュの記憶が未だに強く、鮮烈である。
当時はまだメーカーのブレンドしたダージリンしか飲んだことがなく、正直なところ紅茶がこんなによい香りがするとはそれまで思いもよらなかったのだ。

適当に淹れただけだったのだが、むしろ設備が整わず適当だったことで、沸騰した熱湯でなかったのがよかったようで、ちょうど良い環境で淹れることができたのだ。

それが、いつの間にか嗜好がずれていったのかは覚えがないが、夜に高いお茶を飲むよりも、食後や間食の間のお茶の方へと重点が移り、好みの紅茶も変化した。
だが1杯あたりの価格は減ったものの、その分、消費量が格段に増えたために、トータルのコストは大幅に上昇することになってしまった。

ダージリンのブランド力

嗜好品としてはダージリンの品質は紅茶のなかでも他の産地を大きく上回る。
もちろんブランド力の維持にも余念がない。
さらに通常の紅茶だけでなく、緑茶、半発酵のウーロン茶、シルバーチップだけで作った紅茶などの変わり種も開発している。

同じカメリア・シネンシスでありながら、緑茶やウーロン茶はフラワリーな風味でありながら味わいも悪くなかったが、如何せん高額だったことと、生産が安定しないのか消費が見込めないのか、あまり流通はしていないようだ。

Darjeeling tea plantation

とはいえ、輸出国としてはインドは決して恵まれているわけではない。
ダージリン以外にも主な産地が政情不安定なことに加え、大量生産には向いていないし、輸送も決して楽ではない。
さらに紅茶単体としての飲み物より、他のフレーバーや飲み物と合わせた紅茶飲料に向く癖のない素直な茶葉が求められるようになっているのも、難しいところだ。

東アフリカ諸国の紅茶産業

21世紀に入り、東アフリカ諸国が紅茶産業では大きく成長している。
特にケニアはスリランカを抜いて現在、紅茶の輸出ではトップの位置を奪っている。
生産量では3位だが、世界の茶の輸出量の20%以上をケニアが占めている。

アフリカが伸びている理由としては、

  • 地理上の条件
  • 新興の産地であること
  • 政情が安定している

の3点があげられるだろう。

アフリカ大陸はユーラシア大陸ときわめて一部でのみつながっており、大部分が海で隔たれている。
そのため、病害虫が侵入しづらく、無農薬栽培が基本となっている。

無農薬栽培は産業としてメリットが多い。
単に健康志向というだけでなく、味に影響を与えることがない。
さらにコストを押し上げる農薬が不要なため、商品全体の価格を下げることができ、競争力にも良い影響がある。

さらにケニアの茶園の多くは標高1200メートルから2700メートルの高地にあり、一年を通して安定した降水量で茶の生育に適した気候であり、癖がなく現在の加工飲料への需要に適した茶葉が算出される。
スリランカのディンブラやヌワラエリヤといったハイグロウンティーの産地と似た条件だ。

Kiambethu Tea Farm

アフリカではインドやスリランカと比べても新興産業であることもメリットになる。

まず茶樹が若いため、収穫能力が高い。

また茶摘みは人力だが、製法は主にCTCが中心で、製造工程が機械化されており、導入されている機械が新しい。
現代の紅茶産業では抽出の早い茶が求められるが、BPやPFといったこうした用途に向いた製茶が行われている。

さらにほとんどの茶園が先進的な経営体制を整えており、組織的な活動が行われている。
政府のバックアップもあり、輸出へのサポートも積極的だ。

これらの国々は、比較的、国内情勢が安定しており、近代化も進んでいる。
アフリカ諸国といえば今でも古いイメージが残っているが、これらの国々はそれとは異なり、治安や内乱のリスクが低いところが多い。
この点もインドやスリランカより商取引では有利に働くだろう。

こうした条件のもと、ケニアを始めとするアフリカの紅茶は輸出産業として躍進を続けている。

日本での知名度は低いが

ケニアをはじめとする東アフリカ諸国が輸出大国となり、すでに10年以上が経過している。
だが加工用途がもっぱらのためか、紅茶の産地としては日本では未だに知名度がない。
ペットボトルや缶飲料が普及しても、まだ日本では紅茶といえば優雅なイメージが抜けきっていない。
そういった優雅な紅茶の時間に用いられる茶葉としては、アフリカの紅茶は、インドやスリランカの紅茶と比べて劣るのは仕方がない。

個人的にもアフリカの紅茶をいくつも試してみたものの、OPやBOPではいくつか面白い産地に出会ったが、BPやPFでストレートで美味しい紅茶にはなかなか出会えないでいる。

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とはいえ今後、ペットボトル飲料やカフェのチェーン店等での紅茶飲料の需要は益々高まるはずだ。
今後、紅茶の産地は大きく変動していくだろうが、安定して時代に合った茶葉を供給できるアフリカの紅茶産業は、当面は安泰ではないだろうか。